動く鉢とは



   秋田杉の板で箱状にした鉢植えに、タイヤをつけて動かせる鉢のことです。植物を日の当たる方へ移動も可能です。ペットを外に出して散歩するように、動く鉢に紐を付けて引っ張り家から抜けだして様々な場所に移動し人や環境とコミュニケーションすることが出来ます。
  オーナの方は、「動く鉢」を自然の子・植物の種と見立て、自分の家族・パートナーとして都市の中で共に生き育てることになります。それにより、命の尊さ、癒しや多くの気付きと学びを得ることができます。人と人をつなぎ話す切っ掛けとなり、仲間が出来、新たなコミュニケーションのアイテムとして、「動く鉢」が生まれました。
  家庭で、「動く鉢」を使って土と植物を育てながら様々なプログラムに参加しましょう!

「動く鉢」のスケッチや試作など。
サイズは、450×450×350の木鉢。素材は、秋田杉の板です。

トランスアーツTOKYO2012/旧東京電機大学の残された植木と動く鉢の原型。

動く鉢ミニ!

動く鉢の誕生


動く鉢との物語


   東京都心の自然環境は悲しいくらい疲弊し、人と木々や植物との関係は豊かとは言えません。その中でいかに豊かに生きるのか、現代の私たちに突きつけられた自然からのお題に感じます。

   東京ビエンナーレに参加する、動く土 動く植物の主プロジェクトである「動く鉢」の木製の鉢制作を、宮城県の南三陸のYES工房さんにより作っていただけるとこになりました。東日本大震災を受け様々な困難を超えてきた地域からの動く鉢は、きっと東京の都市で力強く活躍してくれることと思います。また、植物を育てるのに欠かせない土は、自然豊かな秋田県北秋田の森のテラスさんの畑の土をお分けいただけます。もちろん無農薬で育てている土壌は東京の都市で香ると格別です。この2つの東北地域の思いのこもった「動く鉢」の価値と意義から、都市で生きる方達にきっと喜びを提供出来ると考えています。

  とてもシンプルな木製の「動く鉢」は、そのまま使いながら木の味を出していきますが、参加者により付属的なものを追加したり絵を描いたり自由にカスタマイズしていただければ、オリジナルで進化した楽しい「動く鉢」になります。「動く鉢」を介して学び、遊び、多くの方々と複合したコミュニケーションにより、未来の新たな生き方と人と自然との関係のあり方の提案と共に思考出来る機会に、この「動く鉢」が都市の中で活躍し持続可能なプロジェクトとして展開をしていきます。

 

 

動く鉢の植物コミュニケーション

   東京都心の公園などで犬を散歩し、犬同士がコミュニケーションをとる中で、飼い主同士も自然に会話がスタートします。東京下町の路地園芸をしている方が、街を歩く通りすがりの方と、「花が奇麗ですね」、「これは何の花ですか」、「私の家の木に実がなっています」など、植物を介して自然とコミュニケーションが行われている事実があります。そこには、若い方と年配の方が自然と話し、男女関係なく話すことがスムーズに出来るのです。

 

   一昔の日本の住まい、生きる環境の中で、長屋がありお隣さんとの関係は様々な密なコミュニケーションを生んでいました。とても人と人の自然な関係、持ちつ持たれつと言うような皆がつながりの中で生きていました。そこには、生きるための学び、教育も存在していました。今は、家と家が離れ、柵で仕切り、マンションなどではお隣さんも知らない関係の中で生活をしています。核家族化が進行し、地域の中でお年寄りから子どもが学ぶ機会も激減しています。

   東京の都市部は、まさに自然環境から離れた生活の中と近年の住環境は、人と人、人と自然とのコミュニケーションとコミュニティが構築出来ていないことで、孤立感と、生きること生きていることの実感も薄くなり様々なストレスを生んでいる現実があるように感じます。

 

   路地の植物を介して街行く人と会話をする切っ掛けが生まれるように、この都市の中で犬などのペットの交流と路地園芸の植物とを合わせた最強のコミュニケーションツールが、「動く鉢」に内在する可能性になります。

 

植物と土の学びと癒し

  「動く鉢」により、自然を学ぶ貴重な機会になると考えています。土を意識して触れてみること、身近で生きる植物の成長を見てみること。それを動かしてみることで、人と自然との距離感が近くなります。これは都市ならではの自然との関係を接続する在り方です。日の当たる方に植物を動かすことができるので、成長を促すこともできます。逆に日が当たりすぎる場合は、日陰に移動もできます。毎日植物に触れて、土の香りを嗅ぐ都市での自然体験は癒しを享受することになります。もちろん、農業園芸の専門家のアドバイスなども受ける中で自然の理解も深まって行くことが可能になります。

 

自然と仲間

  「動く鉢」により、新たな地域のコミュニティを生み、それは一つのチーム、部活のように同じように大切に思うことの共有から自然と仲間が形成されて行きます。一人では生きられない中、生きる実感やその中で人とのコミュニケーションを得る楽しさは、この街の中でかけがえのない生きる糧となると確信しています。街で生きているという誇りを持てることが生まれてくることを目指します。

 1年目は、様々な学びと観覧と体験の機会を通じて、家族で楽しみながら一緒に土と植物を育てる導入とします。また、里親同士の関係を構築し、部活のようなチームをエリアごとに作っていただき、その中でまた深くつながることを推奨します。例えば、5から6つのチームでそれぞれが集まり交流する。チームで何か育てるものを決めていくなど「動く鉢」を切っ掛けに、進化したコミュニケーションの輪が広がって行くことがとても素敵な関係が構築されると考えます。


2007富山県氷見
氷見の植生リサーチで氷見の街を歩いていた時に出会った、タイヤを付けた荷台のトマトの鉢。ユーモアと現実性と現代性と、人と自然との関係性の様々なものが読み取れた瞬間。
サスティナブルアートプロジェクト ヒミング・2007参加

2017墨田区
路地園芸をリサーチ
久しぶりに墨田区の本所吾妻橋界隈を歩く。この写真は、家の前の道脇に鉢植えを移動し育てている光景。

2017墨田区
路地園芸をリサーチ
植物に水をたっぷりあげた後の写真。土でなくコンクリートに水が広がって行く、、土に染み込むわけではないのが寂しい。

《移動式路地園芸術in京島向島吾妻橋浅草/2010年》           
墨田区役所・東向島児童館、野外各所/東京都墨田区〜台東区浅草

《墨田区京島の長屋/2010年》 
 残念ながらこの光景はもう見られません。後ろに立つマンションのような団地が数棟建ち、この辺り一帯は大きく変わってしまいました。都市整備とまちづくりの名の下、今までの町並みの文化や地域が一瞬に無くなってしまう。長屋は、コミュニケーションツールとして素晴らしく機能していたと思います。お隣さんと言う意識とつながりは必然として生まれていました。また、この写真に写る路地園芸により、家と家をつなぎ路地を植生が彩り道行く人の都市のオアシスの役割としても大きな意味を持っています。鉢分けや種がお隣さんに移動、動いていくのも下町植生のいい在り方であり、植物を介したコミュニティも自然に作られていました。
 この素晴らしい長屋のコミュニティの在り方を、動く鉢のプロジェクトにも踏襲してゆるやかで、やわらかに人と人、自然とつながるような活動になっていければと考えています。